ビジネス

AI ユーザーのための規制対応ガイド:エンジニアからビジネスパーソンまで

ChatGPT, Claude などAIの活用で知っておくべき法的リスクと実践的な判断基準

2025年4月13日24分
生成 AI
ChatGPT
AI 規制
ビジネス活用
EU AI 法
コンプライアンス
吉崎 亮介

吉崎 亮介

株式会社和談 代表取締役社長 / 株式会社キカガク創業者

AI ユーザーのための規制対応ガイド:エンジニアからビジネスパーソンまで

AI エンジニアとして規制を理解する必要性

AI エンジニアから AI 教育企業の創業者、そして現在は AI を活用した組織変革を推進する立場として、私は技術とビジネスの交差点に立ち続けてきた。この数年間で生成 AI を中心とした技術の飛躍的進化を目の当たりにする一方、それを支える法的枠組みも急速に変化している。

EU AI 法の成立、各国の独自アプローチ、日本の特徴的な著作権特例など、国際的な AI 規制は複雑化し、断片的に把握していたこれらの知識を、あらためて体系的に整理する必要性を感じている。そこで、自分の学びもかねて調査を行い、AI エンジニアやビジネスユーザーが知っておくべき法的リスクと実践的な判断基準をまとめた。

技術の可能性とコンプライアンスのバランスを取りながらイノベーションを進めるには、「何がどこまで許されるのか」という実務的な判断基準が不可欠である。本記事では、エンジニアとしての基盤を持ちながら経営側に立つ視点から、AI 開発・活用に関わる皆さんにとって本当に必要な法規制の知識を、わかりやすく整理して伝える。特に、まずは詳細を理解するよりも「全体像を把握する」ことが重要だと考えて、その視点でまとめている。詳細は法律の専門家に任せたい。

私自身、技術の可能性を追求する一方で、社会からの信頼を得るための法的・倫理的枠組みの重要性を常に意識してきた。この両面からの視点が、複雑な AI 規制の風景を読み解く一助になれば幸いである。

2025 年の AI 規制の全体像 - 知っておくべき基礎知識

まず、大きく2つに分けて、「ハードロー」と「ソフトロー」の分類を知っておきたい1。ハードローは法的強制力を持つ法律や規則で、違反すると罰則が課される。一方、ソフトローは倫理指針やガイドラインなど、直接的な法的強制力はないが自主的に従うことが期待される枠組みである。実際には両者の境界は流動的であり、業界標準などのソフトローが契約や規制によって参照されることで、事実上の拘束力を持つ場合もある点に注意が必要である。

重要なのは、規制の形はさまざまでも広く参照される保護すべき価値があることだ。それは主に以下の 3 つに集約されることが多い。

  1. 人間の尊厳と基本的権利の保護:プライバシー、差別禁止など
  2. 透明性と説明責任の確保:AI の判断根拠を説明できるか
  3. 安全性とリスク管理:人命や社会への悪影響をコントロールできるか

ただし注意すべきなのは、これらの価値の解釈や優先順位は法域によって大きく異なる点だ。例えば EU では基本権保護が重視される一方、中国では社会安定や国家統制が優先されるなど、地政学的な緊張関係や解釈の差異が存在する。ある地域で適切と見なされる AI の利用方法が、他の地域では問題視される可能性があることを認識しておく必要がある。

AI エンジニアやビジネスユーザーが肝に銘じるべきは、これらの規制は単なる障壁ではなく、AI の持続可能な発展のための基盤だということだ。

誰が何に気をつけるべきか - 立場別の注意点

AI 規制への対応は、それぞれの立場によって重要度や視点が異なる。以下の図は、それぞれの立場で特に注意すべきポイントを示したものだ。

リスクベースアプローチとガバナンス

多くの規制は「リスクベースアプローチ」を採用している。これは、AI の用途やリスクの程度に応じて、適用される規制の厳しさが変わるという考え方だ2

リスク評価のポイントは主に以下の観点で行われる。

  1. 利用目的と分野:医療や金融など重要な意思決定に関わる分野か
  2. 影響を受ける対象者:弱者や特定グループへの影響があるか
  3. 透明性と説明可能性:判断プロセスが説明できるか
  4. 人間の監視と介入:人間によるチェックや最終判断の仕組みがあるか

これらの観点からリスクを評価し、適切な AI ガバナンス体制を構築することが、法規制への対応の基本となる。

AI を開発する人のための法的リスクガイド

学習フェーズで気をつけるべき法的リスク

AI 開発の最初のステップである学習フェーズでは、主に 2 つの法的リスクに注意する必要がある。著作権問題個人情報保護だ。

著作権問題

日本の著作権法では、2018 年の改正でAI 学習のための著作物利用を特別に認める例外規定(著作権法第 30 条の 4)が導入された3。この規定により、著作権で保護された作品でも AI の学習目的であれば、権利者の許諾なく利用できるとされている。これは国際的に見ても進んだ規定だと一部専門家の間で評価されている。

ただし重大な注意点がある。この例外はあくまで「学習」のための利用に限定されており、学習済み AI が著作物を丸ごとあるいは実質的に複製するような出力をする場合には、著作権侵害の重大なリスクが生じる。この出力に関する法的リスクは現状の法解釈において極めて重要かつ未解決な論点であり、AI を商業展開する上で看過できない問題だ。この例外規定に依拠して開発された AI が生成した出力物が学習データと類似していた場合、明確な法的基準やセーフハーバーが存在しないため、開発者や提供者が侵害責任を負う可能性がある。また、この規定は日本国内の法律であり、国際的なサービス提供には他国の法制度も考慮する必要がある。

米国では「フェアユース」の考え方で AI 学習のための利用が許容されるケースがあるが、現在も裁判で争われている状況だ4。EU では 2019 年の著作権指令でテキスト・データマイニング例外を定めているが、商業目的の場合は制限的となっている。

個人情報保護

AI 学習データに個人情報が含まれる場合、個人情報保護法の遵守が必要となる。特に注意すべきは以下の点だ。

  1. 利用目的の特定と通知・公表:個人情報を AI 学習に利用する場合、その目的を特定し、本人に通知または公表する
  2. データの安全管理:個人情報を含むデータセットの漏洩防止措置
  3. 第三者提供の制限:第三者の AI サービスに個人データを提供する場合の同意取得

個人情報保護委員会は 2023 年 6 月に「生成 AI サービスの利用に関する注意喚起」を公表し、生成 AI への個人情報入力は「第三者提供」に当たる可能性があると警告している5この警告の影響範囲は非常に広い。例えば、社内の業務効率化のために ChatGPT に社内従業員の氏名や連絡先を含むプロンプトを入力するだけでも、個人情報保護法上の「第三者提供」に該当する可能性がある。これは多くの企業の日常業務において、適切な保護措置なしに生成 AI ツールを利用していることで、潜在的な法的リスクが存在することを意味する。特に改正個人情報保護法では、法人に対する最大罰金額が 1 億円に引き上げられており6、コンプライアンス上の重大な懸念事項となっている。

モデル開発・実装時の法的リスク

モデル開発と実装段階(一般にデプロイとも呼ばれる)では、以下の法的リスクに注意する必要がある。

  1. バイアスと差別の問題:学習データのバイアスにより、特定の人種・性別・年齢などに対する差別的な結果を生み出す可能性がある。これは、法的にも倫理的にも重大な問題となる。

  2. 説明責任と透明性:特に EU AI 法では、高リスク AI に対して意思決定の説明可能性と透明性を求めている7

  3. モデルの安全性:AI の出力が有害なコンテンツや危険な指示を含まないよう、適切な安全対策が必要だ。

これらのリスクに対処するため、以下の取り組みが重要になる。

  • 多様でバランスの取れた学習データの使用(例:性別や年齢など様々な属性のデータを均等に含める)
  • 公平性評価の指標の導入(例:異なる属性グループ間での結果の差異を測定)
  • 人間によるレビューと監視体制の構築(例:AI の判断を人間が確認できるプロセスの導入)
  • 出力の制限メカニズム(例:有害コンテンツを検出し除外するフィルター)
  • 説明可能な AI 手法の採用(例:モデルの判断根拠を解釈できる技術の活用)

AI をビジネスで活用する人のための法的判断基準

ChatGPT などのサービス利用時の注意点

ビジネスで ChatGPT などの生成 AI を利用する際、特に注意すべきなのは「データの入力」「出力の利用」に関わる法的リスクだ。

データ入力時の注意点

  1. 個人情報の入力禁止:他者の個人情報を AI に入力することは、個人情報保護法上の「第三者提供」に該当する可能性がある
  2. 機密情報の取り扱い:企業の機密情報や顧客情報を AI に入力すると、情報漏洩リスクとなる
  3. 著作権のある素材:他者の著作物をそのまま AI に入力することは、日本では合法でも他国では問題となる可能性がある

出力利用時の注意点

  1. 著作権の帰属:AI が生成した内容の著作権帰属は利用規約で定められており、商用利用可否も確認が必要
  2. 事実確認の責任:AI の出力に含まれる事実誤認や誤情報については、利用者側に確認責任がある
  3. 適切な引用と出典:AI 生成コンテンツを利用する際は、AI を利用した旨を明示することが望ましい

社内利用方針の策定ポイント

企業で AI を活用する際は、明確な社内利用方針を策定することが重要だ。方針に含めるべき要素は以下のとおりだ。

  1. 利用可能な AI サービスのリストと認証プロセス
  2. 禁止される入力情報の明確な定義(個人情報、機密情報など)
  3. AI の出力の取り扱い(社内利用、公開利用、商用利用の区別)
  4. 責任の所在の明確化
  5. 違反時の対応プロセス

このようなポリシーを策定することで、組織内での AI 活用を促進しながらも法的リスクを最小化できる。

日本と世界の AI 規制比較 - エンジニア視点での整理

AI 規制のアプローチは国や地域によって大きく異なる。ここでは日本、EU、米国、中国の規制を比較し、エンジニアとして知っておくべきポイントを整理する。

国・地域別のアプローチ比較

国・地域主な影響対応策
日本学習データ収集の自由度が高い
ソフトロー中心で柔軟性がある
著作権特例を活かした学習データ確保
倫理指針への自主的対応
EUリスク分類に応じた厳格な要件
説明責任・透明性の確保が必須
AI システムのリスク評価
技術文書の整備
説明可能性の確保
米国連邦レベルの統一規制がない
州法レベルの対応が必要
FTC ガイドラインの遵守
NIST フレームワークの活用
州法の動向把握
中国生成 AI の厳格なコンテンツ規制
政府による審査・管理
コンテンツフィルタリング
政府審査対応の準備

日本のアプローチ

日本の AI 規制は「ソフトロー」中心のアプローチを取っている2。法的強制力のある規制よりも、「人間中心の AI 社会原則」などのガイドラインを通じて、AI の健全な発展を促進する姿勢が見られる。

また、著作権法の特例(第 30 条の 4)により、AI の学習目的であれば著作物を利用できる環境が整っており、これは各国と比較しても先進的な取り組みとされている。

個人情報保護については、2022 年の改正個人情報保護法により、漏えい報告の義務化や越境移転に関する規制強化が行われた6。違反した場合の罰則も強化され、法人には最大 1 億円の罰金が科される可能性がある。

EU のアプローチ

EU は 2024 年に包括的な AI 規制法である「AI 法(AI Act)」を成立させた8。この法律はまず「AI システム」を広く定義しており、その定義に該当するかどうかが適用の第一歩となる。この定義は「機械学習アプローチ、論理・知識ベースアプローチ、または統計的アプローチを用いて、人間が定義した目的に対して、コンテンツ、予測、推奨、または決定を生成するシステム」と広範で、多くのソフトウェアが対象となる可能性がある。

AI 法は、AI システムをリスクレベルに応じて分類し、それぞれに応じた規制を課すアプローチを取っている。

  • 禁止される AI:社会的スコアリング、リアルタイム生体認証による遠隔識別(法執行目的での一部例外あり)など
  • 高リスク AI:医療診断、採用選考、教育評価、与信審査などの分野で用いられる AI
  • 限定的リスク AI:チャットボットなど、透明性要件のみが課される生成 AI(AI と対話していることの開示義務)
  • 最小リスク AI:スパムフィルターなど軽微なリスクしかない AI

特に高リスク AI に対しては、以下のような厳格な要件が課される。

  • リスク評価と管理:AI システムの潜在的リスクを特定し管理する体制
  • データガバナンス:学習データの品質管理と偏りの排除
  • 技術文書の整備:システムの開発と動作に関する詳細な文書化
  • 記録の保持:AI システムの動作ログの保存
  • 透明性の確保:利用者への説明と情報提供
  • 人間による監視:AI の判断を人間が検証できる仕組み
  • 正確性と堅牢性:システムの技術的精度と安全性の確保

重要なのは、EU AI 法には強力な域外適用効果(通称「ブリュッセル効果」)があることだ。EU 域外の企業であっても、EU 市場に AI システムを提供したり、EU 域内でサービスを提供したりする場合は対象となる。つまり、この法律は実質的に多くのグローバル企業にとって事実上の世界標準となる可能性が高い。

米国のアプローチ

米国には現時点で EU のような包括的な AI 規制法は存在しない。代わりに、連邦取引委員会(FTC)が既存の消費者保護法や差別禁止法を適用し、AI に関連する不当表示や差別的アルゴリズムに対する監視を強化している9

注目すべきは、連邦法がないにもかかわらず、米国ではある種の規制的コンセンサスが形成されつつある点だ。ホワイトハウスが発表した「AI 権利章典の青写真」や、NIST(米国国立標準技術研究所)が 2023 年に発表したAI リスク管理フレームワーク10などを通じて、バイアス緩和、説明可能性、透明性といった原則に関する合意が広がっている。これらは自主的なものだが、将来の規制や執行の優先順位(特に FTC の活動)の方向性を示唆しており、米国で事業を行う企業は、単一の包括的な法律がなくとも、これらの原則への準拠が期待されていることを認識すべきだろう。

州レベルでは、カリフォルニア州の消費者プライバシー法(CCPA/CPRA)やイリノイ州の生体情報プライバシー法(BIPA)など、AI に関連する部分的な規制が存在する。

中国のアプローチ

中国は 2023 年 8 月に「生成 AI サービス管理規定」を施行し、ChatGPT のような生成 AI に対する規制を導入した11。この規制は一見すると厳格な「統制」のみを目的としているように見えるが、実際には「統制」と「推進」という二重の目的を持っている点が重要だ。中国は AI 技術において世界的リーダーシップを確立するという国家戦略を持ち、国家が管理する境界内での強力な AI 開発・展開の推進に取り組んでいる。

規制は生成 AI 提供者に対して、以下のような義務を課している。

  • 事前の安全評価:サービス提供前に当局による評価を受ける義務
  • コンテンツフィルタリング:違法・有害コンテンツの生成防止措置
  • アルゴリズムの管理:公共の利益に反するアルゴリズムの禁止
  • ユーザー識別:サービス利用者の実名登録管理
  • データセキュリティ:個人情報と重要データの保護

これらの規制は国家の価値観と安全を守りつつ、同時に明確な枠組みの中で企業が AI 技術を開発・展開できる環境を整備するという意図がある。海外企業にとっては、これらの規制への対応と、中国の国家主導の AI 開発推進の両面を理解することが重要だ。

AI 規制の国際的な流れとタイムライン

AI 規制の世界的な流れを時系列で見ると、ソフトローから始まり、徐々にハードローへと移行している傾向がある。

AI規制の主要タイムライン
2017

改正個人情報保護法施行(日本)

AI開発に影響を与える個人データ保護の法的枠組み整備

2018
5月

GDPR施行(EU)

個人データ保護の世界的標準となる規則の発効

2018
12月

改正著作権法施行(日本)

AIの学習目的での著作物利用を許容する特例の導入

2019

人間中心のAI社会原則策定(日本)

内閣府による日本のAI開発・利用の指針となる原則の公表

2019

OECD AI原則採択(国際)

36カ国が合意した国際的なAI開発・利用の原則

2021

改正個人情報保護法施行(中国)

中国における個人情報保護の包括的な法制度の確立

2021

UNESCO AI倫理勧告採択(国際)

193カ国による初の世界的なAI倫理に関する合意

2022

日本個人情報保護法改正施行(日本)

漏えい報告義務化や越境移転規制の強化

2023
1月

AIリスク管理フレームワーク公開(米国)

AIシステムのリスク管理に関する体系的ガイドライン

2023
6月

日本PPCがChatGPT注意喚起

生成AIサービス利用における個人情報保護の注意点を発表

2023
8月

生成AI管理規定施行(中国)

生成AIサービスに特化した規制の導入

2024
3月

AI法採択(EU)

世界初の包括的AI規制法の採択

2024-2027

AI法段階的施行(EU)

禁止事項は6ヶ月後、高リスクAI義務は24ヶ月または36ヶ月後など施行時期が順次到来

開発・利用段階別の意思決定ガイド

最後に、実際の AI 開発・利用シーンでの判断に使える意思決定ツリーを紹介する。

AI 開発者のための意思決定ツリー

以下のツリーは、AI 開発における法的判断の一般的な流れを示しているが、これは複雑な法的判断を簡略化したものであり、すべての状況に適用できるわけではない。特に注意すべき点として、ここでの「高リスク」「低リスク」などの表現は、EU AI 法の公式なリスク分類と必ずしも一致するものではない。実際の法的判断には、ここに示した以上の複雑な要素や文脈依存の判断が必要となる場合が多いため、重要な決定を行う際には法務専門家への相談を推奨する。

ビジネスユーザーのための意思決定ツリー

以下のツリーは、ビジネス環境での AI 利用における法的判断の一般的な流れを示しているが、これは複雑な法的判断を簡略化したものである。実際のビジネス状況では、企業の規模、業界、扱うデータの性質、国際的活動の範囲など、様々な要素によって判断が変わる可能性がある。特に「高リスク」「中リスク」「低リスク」といった表現は一般的な注意レベルを示すものであり、各企業の状況や適用される法律によって異なる可能性がある。このツリーはあくまで参考として活用し、重要な判断には法務部門や専門家への相談を検討すべきである。

AI と法規制の共存に向けて

AI エンジニアとしての視点から法規制を整理してみると、これらは技術発展の障壁ではなく、持続可能なイノベーションのための基盤だと理解できる。法規制と AI 技術は相反するものではなく、共に進化していくべきものだ。

私自身、技術の可能性を追求する一方で、その社会的受容性や倫理的側面を常に考慮してきた。今回の調査を通じて、改めて「技術と社会の架け橋」の重要性を感じている。

ただし、私は法律のプロフェッショナルではないため、今回の記事も自身への学びとして有益なことをなるべく丁寧に検証しながら書いたが、最終判断はみなさんが下さなければならない。法的な問題に直面した場合は、専門の法律家に相談することを強くお勧めする。

現状においては、日本国内での開発・利用に限れば比較的自由度の高い環境が整っている一方で、グローバルに展開する場合には国ごとの規制差異に注意が必要だ。特に EU の AI 法の本格施行に向けて、早めの対応準備が求められる。

AI の規制環境は今後も急速に変化していくだろう。私たちエンジニアやビジネスユーザーは、最新の動向をキャッチアップしながらも、根底にある「人間中心」「透明性」「安全性」といった価値観を大切にすることで、技術と法規制の調和を図っていくことが重要だ。

参考文献

Footnotes

  1. 総務省「AI 利活用ガイドライン」2019 年。ソフトローとハードローの考え方について説明している。

  2. 内閣府「人間中心の AI 社会原則」2019 年。日本の AI 倫理原則の基礎となる文書。 2

  3. 文化庁「改正著作権法(デジタル・ネットワーク社会における著作物の利用円滑化)に関する説明資料」2018 年。第 30 条の 4 の情報解析規定について説明している。

  4. 米国著作権局「人工知能と著作権」2023 年報告書。AI と著作権の関係について米国の視点から分析している。

  5. 個人情報保護委員会「生成 AI サービスの利用に関する注意喚起等について」2023 年 6 月。生成 AI への個人情報入力リスクを警告している。

  6. 個人情報保護委員会「改正個人情報保護法の概要」2022 年。漏えい報告義務化や越境移転規制の強化について説明している。 2

  7. 欧州委員会「人工知能法に関する規則の提案」2024 年。EU AI 法の構造とリスクベースアプローチについて説明している。

  8. 欧州議会「AI 法(人工知能法)」2024 年。EU AI 法の全文と採択経緯について説明している。

  9. 米国連邦取引委員会「AI・自動化システムに関するガイダンス」2023 年。FTC の AI 監視アプローチについて説明している。

  10. 米国国立標準技術研究所「AI リスク管理フレームワーク 1.0」2023 年。AI リスク管理の体系的アプローチを示している。

  11. 中国国家インターネット情報弁公室「生成式 AI サービス管理規定」2023 年。中国の生成 AI 規制の内容を説明している。

生成 AI
ChatGPT
AI 規制
ビジネス活用
EU AI 法
コンプライアンス
吉崎 亮介

吉崎 亮介

株式会社和談 代表取締役社長 / 株式会社キカガク創業者

「知の循環を拓き、自律的な価値創造を駆動する」をミッションに、組織コミュニケーションの構造的変革に取り組んでいます。AI技術と社会ネットワーク分析を活用し、組織内の暗黙知を解放して深い対話を生み出すことで、創造的価値が持続的に生まれる組織の実現を目指しています。